ミステリドラマニア

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ドクター・フー「暖炉の少女」後日談からポンパドゥール夫人のその後を考える

暖炉の少女(The Girl n the Fireplace) 

今回はイギリスの人気SFドラマ「ドクター・フー」にて2006年5月6日に放送されたエピソードを考察します。

 

「ドクタ・フー」についての記事はこちら

mysterydrama.net

 

 

「暖炉の少女」とは?

「ドクター・フー」のシーズン2第4話、タイトルは「暖炉の少女」(原題:The Girl n the Fireplace)。脚本は11代目ドクターから創作総指揮&脚本を担当したスティーブン・モファット氏が担当しています。

 

ルイ15世の公妾であった実在の人物ポンパドゥール夫人と、10代目ドクターとの淡き恋愛模様を絡めたストーリで、2007年にヒューゴー賞映像部門短編部門を受賞するなど評価の高いエピソードでした。

仮面姿のアンドロイドの不気味さと、18世紀パリの華やかさが印象的に映る中、ポンパドゥール夫人とドクターとの切ない運命に涙した方も多いのではないでしょうか。

 

※現在Amazonプライムビデオにて視聴できます。ドクターフー」シリーズの中でも特に人気の高いエピソードなので気になる方はチェックしてみてくださいね! 

 

あらすじ

ベルサイユ宮殿

10代目ドクターとコンパニオンのローズ、ミッキーの3名は無人の宇宙船へ到着します。船内には、51世紀であるはずにもかかわらず古い暖炉が。

 暖炉の向こうは18世紀のパリ、ドクターは暖炉越しにレネットという少女と言葉を交わします。

 

 

彼女の部屋へ行くと、時計が壊れているにもかかわらずカチカチカチと音がしていました。彼女のベッドの下には仮面をつけた不気味なアンドロイドが・・・

レネットは時計仕掛けのアンドロイドに脳を狙われていたのです

 

彼女の脳をスキャンするアンドロイド、けれども力ずくで襲い掛かることはしません。アンドロイドは、彼女の脳は未完成であり、時が経ち完成するのを待っていると発言します。ドクターは彼女を守るため、アンドロイドを連れ宇宙船へと戻ってゆきます。

 

再び暖炉から彼女へ会いに行くと、少女は美しい女性へと成長していました。彼女とキスを交わしたドクターは、彼女がレネット・ポワソン(のちにポンパドゥール夫人と呼ばれた人物)であると知ります。

短い逢瀬を重ねながら夫人とドクターは惹かれ合っていきますが、アンドロイドが彼女をさらおうする時が少しずつ近づいていました・・・

 

 

14年越しのエピローグ動画「Pompador」

2020年5月6日、「暖炉の少女」放送からちょうど14年後の日に、脚本を担当したスティーヴン・モファット氏が「暖炉の少女」の後日談となる動画を作成したことをご存知でしょうか。

これはCOVID-19発生によるロックダウン期間中にリモートで製作されYoutubeにて公開されたもので、ポンパドゥール夫人役のソフィア・マイルズの独白のみで構成されている約2分半のエピソードです。

 

短いエピソードであるにもかかわらず、「暖炉の少女」の結末を一変する動画として話題となっています。

日本語字幕はないのですが、こちらから観てみてください。

 


Doctor Who: LOCKDOWN | Pompadour

 Doctor Who LOCKDOWN公式Yotuebe「Pompadour」より

 

 

2006年と2020年の結末の違い

2006年放送「暖炉の少女」の結末

⇒宇宙船へと戻ったドクターは、暖炉越しに夫人と言葉を交わし、「星を見てみたい」という夫人に荷造りをするよう伝えます。

しかし、ドクターが暖炉から彼女を迎えに行くと、そこでは既に7年の月日が経っており彼女は病で帰らぬ人となっていました。

ドクターは彼女の残した手紙を読み終え、ターディスに乗り宇宙船を後にします。

  

 

2020年公開「Pompadour」の結末

⇒ポンパドゥール夫人の意識は宇宙船内のコンピューターにあり、愛するドクターに会うことを何年も待っているのに、と嘆いています。

アンドロイドが彼女の思考や記憶をコピーし、コンピューターに保管したのではないかと考えていますが、彼女は自分がどんな状況にあるのか完全には理解していないよう。

体の感覚は無く、ただただ孤独。

何故ドクターの顔が見えないのか、何故声も聞こえないのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ええっ!

 

 

 

 

当時の結末も悲しいものでありましたが、今回の後日談は更に胸をえぐるような内容ですね・・・

 

 

考察

 言われてみれば、「暖炉の少女」本編でアンドロイドはポンパドゥール夫人のことを、(おそらく宇宙船と)「同類だ」と発言していましたよね。

アンドロイドは彼女の脳を頻繁にスキャンしていましたし、その時に宇宙船のコンピューターには彼女の意識が保存されていたのですね。

 

つまり、彼女の脳が必要だったのはただ宇宙船の名前がマダム・ド・ポンパドゥール号だったから勘違いしただけ、ではなかったということ。

 

けれども、いつから彼女の意識が宇宙船内にあったのか考えると謎です・・・

 

 

 

 

気になって気になって考えた結果、史実と「暖炉の少女」「pompadour」の2つのエピソードをもとに私なりの解釈によるストーリーができました。

 

 

 

 『クターと別れたポンパドゥール夫人は、いつかドクターと再会し星を見ることを夢見ていました。

しかし、彼女は結核という病に侵されます。

回復の望みがないことを知った彼女は、最後にもう一度だけでもドクターと会いたいとドクター宛の手紙を書きます。

手紙

体の自由が利かない中、手紙と共に美しかった頃の姿絵も共にドクターへ渡そうと暖炉の傍へ向かいます。しかし、いくら呼びかけてもドクターの答えはありません。

それでもあきらめきれない彼女は、自ら宇宙船へと乗り込むことを決意します。

 

 

王に心配をかけないため、自分に似た姿の病人を身代わりにし、最後の力を振り絞って暖炉の向こうへと渡ろうとします。

本来であればただの人間が行き来することのできない暖炉でしたが、彼女は特別でした。

 

 

ポンパドゥール夫人は以前アンドロイドの目的を探るためにドクターから心を覗かれたことがありました。

彼女もその時にドクターの心を覗いておりどうすれば行き来ができるかわかりましたし、32歳の時に一度宇宙船へ足を踏み入れていたので、彼女の体は拒絶されることなく宇宙船へと到着しました。

 

 

ただ、51世紀へ行きたいと願った彼女がたどり着いた年は5000年、ドクター達が宇宙船に来るのは5037年

銀河

宇宙船は未完成で、多くの人が彼女の出現に驚きます。

彼女は自らの未来がもう長くない事、ドクターと共に星を見る約束をしたことなどを話ます。

彼女に同情した乗組員たちは、なんとか彼女をドクターと会わせようと宇宙船に乗せることを決めます。

 

しかし、ボロボロになった彼女の体ではそれまでに生きていられないだろうと思い、51世紀の医術で体の不要な部分を処分、脳などの重要な部分のみを維持しながら宇宙船に乗れるよう処置を施したのでした。

 

 

宇宙船は、医療船の役目も果たすよう作り替えられ、ドクターが見つけやすいよう、マダム・ド・ポンパドゥール号と名づけられました。

彼女の姿を描いた肖像画も船内に飾られることとなります。

長い間ドクターに会えないポンパドゥール夫人でしたが、宇宙船では乗員たちのおしゃべりを聞いたり過去の思い出を思い返しながら30年以上の年月を過ごしました。

しかし、いつしか乗員は減っていき、5037年には誰の声も聞こえなくなったのでした。

 

 

残ったのは宇宙船を修理しようとするアンドロイドのみ。

ついにやってきたドクター達ですが、宇宙船内のカメラにはドクターの後ろ姿しか映らずコンピューターの中の彼女はドクターへ呼び掛けても届かないことに気がつくのです・・・

 

 

 

感想

ドクター・フーでは時系列が複雑なエピソードが多いので、「暖炉の少女」でも鶏が先か卵が先か問題(ポンパドゥール夫人の運命を変えたのはドクターなのか)という疑問が出てきます。

他にもなぜ37歳の彼女でなければならなかったのか、暖炉は繋がったままだったのに本当にアンドロイドは滅びたのか、など疑問に思うことは沢山あります。

 夫人が狙われた理由も、「 宇宙船と同じ名前だから」というふわふわした理由でしたし・・・

 

 

私はミステリー好きなので、「暖炉の少女」は動機のないミステリドラマを見たときのようにすっきりしない気持ちであまり好みではなかったんです。

けれども、後日談「Pompadour」はかなり辛い結末ではありましたが、宇宙船を修理するのに彼女が必要だった理由が以前より明確になり、謎がとけてすっきりしました。

 

賛否両論あると思いますが、私はこのエピソードがある方が物語として完成度が高いと思います。

既にモファット氏はドクター・フーから離れているため実現するかはわかりませんが、

コンピューターが生き続ける限り、ドクターと再会する可能性があることも救いになりますね。

いつかそんなエピソードが描かれることを期待したいです。