今回は刑事モース(シーズン1)の感想と考察記事です。
最近シーズン1を一気見しました。気になっていたドラマだから、という理由もありますが、ドラマの独特の雰囲気に引き込まれ止まらなくなったというのが一番の理由。
「刑事モース」についてはこちらの記事でもご紹介しています
どの作品も個性を放っていて、ドラマシリーズのうちの1つではなく、シリーズものの映画作品のように鑑賞できました。
全体として言えるのが、映像が美しいこと! 舞台となる1960年代後半のオックスフォード、部屋の家具、ファッションが魅力的に映し出され、カメラワークも凝っています。
特に女性が映るシーンはどこを切り取っても絵になる映像でした。
あまりにも好きだドラマだったので、シーズン1の各エピソードを好きな順にランク付けして、感想を書いてみます。
エピソード一覧
- シーズン1第1話(Case 1) 華麗なる賭け (原題:ある晴れた日に)
- シーズン1第2話(Case 2)毒薬と令嬢 (原題: 泥棒かささぎ)
- シーズン1第3話(Case 3)殺しのフーガ (原題: 殺しのフーガ)
- シーズン1第4話(Case 4) 犯罪相関図 (原題: ファミリービジネス)
- シーズン1第5話(Case 5)家族の肖像(原題: 家族の絆)
ランキング
TOP5 シーズン1第3話(Case 3)殺しのフーガ
このストーリーはサスペンス好き、音楽(オペラ)好きにおすすめ。
現場に残されたメッセージがオペラの歌詞の一部で、それが犯行をみたてているという。
メッセージを見ただけで関連する曲名とストーリーが浮かぶってどれだけ音楽好きなんだろう・・
(それともオペラマニアだったら当たり前なのかな?)
ミステリーではよくある演出ですが、人名がアナグラムでそれを解くとすべての真相がわかりそのシーンは気分が良かったです。
とてもよくできたストーリーだったと思いますが、最下位にしたのは心臓に悪いから。
サスペンス好きにはたまらない展開だったかもしれませんが、私はドキドキしてしまいました。犯人もすぐに見当がついてしまったというのも大きいです。
動機がないようなストーリーや、子供が巻き込まれるのは純粋に楽しめないので第5位です。
TOP4 シーズン1第5話(Case 5)家族の肖像(原題: 家族の絆)
このエピソードで良かったのは、いつもは上司のサーズデイに守られていたモースが、今回は彼を守るということ。
サーズディはいつも冷静だと思っていましたが、最後はあそこまで取り乱しとんでもないことをしようとしますね。
でも、家族のために戦う所は共感できますし、やっぱりカッコいいです!!
このドラマ見続けていたらモースそっちのけでサーズディファンになりそう。
「主任警部モース」でのジョン・ソウが少し足を引き摺っていた理由もこのエピソードでわかりました!
お父様役の顔立ちをジョン・ソウに似せようとしているスタッフの努力を思うとニヤニヤしてしまったり。
モース好きにとっては欠かせないエピソードだったのではないでしょうか。
TOP3 シーズン1第4話(Case 4) 犯罪相関図 (原題: ファミリービジネス)
こちらはいたって普通のミステリードラマといった感じ。
女王の訪問に浮かれているのがイギリスらしいです。
(イギリスのドラマには王室ネタがよく出てくるけれどそんなに身近な存在なのでしょうか…)
印象的だったのは上司のサーズディがある人物と会話する際に、いきなりドイツ語を話し出し怒りを露にするシーン。
1960年代が舞台のドラマですものね。
戦争を体験した人の意識がよくわかるシーンでした。
TOP2 シーズン1第1話(Case 1) 華麗なる賭け (原題:ある晴れた日に)
こちらは初めて見る方だけでなく、主任警部モース時代からのファンにも向けられたエピソード。
所々に「主任警部モース」へのオマージュが含まれるのも嬉しかったですし、最後にジョン・ソウ(主任警部モースを演じた俳優)の顔が映されるというドラマならではの演出も好きです。
自動車屋さんのシーンで真赤なジャガーが映るたび、このエピソードがきっかけで購入するのかとワクワクしていたら特にそのような描写はなく、また別のエピソードでで愛車のジャガーと出会うのかな。
視聴者をじらしますね。
複雑になっているのは、そこに大物人物たちの腐敗警察内部の腐敗が同時に描かれていて事件にリンクしているから。
最後のシーンが物悲しくて、最後に流れた曲「ある晴れた日に」はオペラに詳しくない私でもジーンとくるものがありました。
この回でもそうだし第5話「家族の肖像」でも感じましたが妻怖い…
同時に夫婦というものの不確かさを感じました。
「華麗なる賭け」では夫が大切過ぎて、「家族の肖像」では夫がいやで、本音を話せず事件につながるというのは興味深いです。
TOP1 シーズン1第2話(Case 2)毒薬と令嬢 (原題: 泥棒かささぎ)
暗号推理暗号推理!のストーリー。
このエピソードではモースの推理がさえわたっていて、知識をひけらかしているように見えるほどガンガン推理を的中させるのが良い!
「シャーロック・ホームズ」の推理のように、一つの自転車から持ち主を推理するシーンはしびれました。
元素記号をもとにした暗号から名前が導かれるシーンをみたときは、そうそう!これが見たかったの!と危うく呟くところでしたよ。
これほどサスペンス的演出が無い作品も珍しいけれど私はこのくらいの純ミステリーなドラマが大好きです。
サスペンス要素0で推理要素100のドラマがもっと増えないかな〜
このタイプの話がシーズン2以降も続くことを願います。
刑事モースで流れる音楽
第1話「華麗なる賭け」のはじめと終わりで流れるオペラ音楽。
刑事モースは音楽推理ドラマと言って良いほど、毎回ストーリーに沿った音楽が流れます。
これだけ丁寧に作られているドラマなのだから、音楽にも意味があるのかなと思い今回調べてみました。
プッチーニ「ある晴れた日に」
これはイタリアの音楽家ジャコモ・プッチーニが作曲したオペラ「蝶々夫人」のクライマックスで歌われる曲です。
夫を信じて待ち続ける妻の悲しい物語でもあります。
エピソード
芸者である15歳の日本の少女(のちの蝶々夫人)はアメリカ海軍の士官ピンカートンと結婚します。
この結婚が永遠の愛によるものと信じる蝶々夫人と、一時的なものだと割りきるピンカートン。
それでも任務を終えたピンカートンは、再び戻ってくると約束しアメリカへ帰国します。
蝶々夫人は、ピンカートンが夫人の元に戻らないのではないか、と疑念を抱く下女に向けてアリア「ある晴れた日に」を歌います。
「ある晴れた日に」はある晴れた日に船が到着し、きっと夫が帰ってくるのよ、あなたが心配しなくても私は彼が帰ってくるのを信じているわという曲。
純粋な気持ちを含んだ歌詞と、柔らかなメロディの美しい曲です。
しかし、ピンカートンはアメリカでアメリカ人女性と結婚していました。
それを知って夫人へ求婚するものも現れますが、夫人は「夫が私と可愛い子供のことを忘れるはずがない」とかたくなに拒みます。
ある日ピンカートンは日本に来ることとなり、待ちわびていた再開に期待する蝶々夫人。
けれども彼は罪悪感から会おうとはせず、アメリカ人妻を通して子供を引き取りたいと伝えます。
夫人はアメリカ人妻にも礼を尽くしますが、その後子供に別れを告げ、父の遺品の刀で喉を刺すのです。
「華麗なる賭け」との共通点
第1話「華麗なる賭け」でのキャロウェイはまさに夫を信じて待ち続ける女性。
このオペラのストーリーと歌詞を理解したうえで考えると、ただの嫉妬に思えた動機も「夫への愛情」からの行動と深く理解できました。
他のエピソードの音楽も知っているとより理解が深まるのかな。
彼女には全く同情できないけれど、オペラ歌手として称賛を浴びていた彼女がすべてを捨ててでも得たかったものがわかるような気がします。
信じてすべてを捧げていたものが崩れたからの出来事だったということですよね。
私は、ミステリーは動機が一番大切だと思っています。
「あー面白かった」で終わるのではなく、反面教師的に考えさせられることも多いのです。
特に刑事モースのシーズン1では、家族という確かなようで不確かでもある関係がドラマのストーリーに影響を与えていることも多かったです。
家族だからなんでもわかりあえる、信頼しあえる、というわけでは全くなくて、相手への思いやりや気持ちをぶつけることも大切にしなければいけない。そう思いました。